ウンターエンガディン地方のガイドブック

UNTERENGADIN/ENGIADINA BASSA
所属州
Kanton/Canton/Cantone
グラウビュンデン州
Kanton Granbünden
Chantun GrischunKanton
言語
Sprache/Langue/Lingua
ドイツ語(スイス・ドイツ語)
ロマンシュ語
郵便番号
Postleitzahl/Code postal/Codice Postale
グアルダ:7445
シュクオル:7550
ミュスタイア:7537
標高
Höhe/Altitude/Altitudine
グアルダ:1,653m
シュクオル:1,290m
ミュスタイア:1,273m
人口
Einwohner/Population/Abitanti
グアルダ:155人
シュクオル:4,638人
ミュスタイア:748人
(2016年)
行政ウェブサイト グアルダ:www.guarda.ch/
シュクオル:www.scuol.ch/

ウンターエンガディン地方(Unterengadin・ロマンシュ語Engiadina Bassa)はグラウビュンデン州、イン川を境目に分かれる地域の北側一帯を指すエリアです。

ベルニナ峠やサンモリッツのあるオーバーエンガディン地方と比べると旅行者の数も少なく、またそれ故に独自の文化を守り続けることができている地域でもあります。家々の壁に描かれたスグラフィート(色の違う漆喰を何層か作り、それを削り出して模様を描く手法)やフレスコ画はこの地方独特のもので、スイスの他のエリアとは違う雰囲気を感じ取ることができます。

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グアルダ
Guarda

グアルダはスグラフィート(色の違う漆喰を層にして描き上げる技法)で飾られた家が並ぶ、人口わずか約180人の小さな村。

駅や村の中を見るとわかるように、ロマンシュ語が多く使われていて実際に住民の6割がロマンシュ語(とドイツ語)を母語とする人々。

レーティッシュ鉄道のグアルダ駅(Guarda Staziun)は谷底にあり、村までは歩き(約30分)かポストバス(所要9分)で。ただ、ポストバスは1日往復15本の運行のみで、間隔も20分〜1時間40分とばらつきがあるので注意。歩くと高低差200m程の坂道ですが、放牧地や花の咲く草原が続くのでハイキングがてらにはちょうどいい感じです。

村の中心はメインストリート1本だけ。織物や工芸品、チーズなどの商店がいくつかあるので覗いてみるのも楽しいところ。スイスで有名な絵本、アロイス・カリジェの「ウルスリのすず Schellenursli」はこの村で毎年3月に行われる祭りをモチーフにしたもの。

グアルダへの行き方

アクセスはレーティッシュ鉄道の利用で、起点となるのはクール。各地からの所要時間は、クールからシュクオル・タラスプ(Scuol-Tarasp)行き直通列車で1時間46分、サンモリッツからはサメダン乗換で1時間11分。チューリッヒ方面からの場合はクールの手前にあるラントクワルト(Landquart)で乗り換えて、所要1時間18分(チューリッヒ中央駅からは2時間31分)。車内放送で「ネヒストハルト・グアルダ Nächste halt Guarda(次はグアルダ)」と流れたあとにボタンを押さないと通過してしまうことがあるので注意が必要です。

シュクオル
Scuol

グアルダからさらにイン川を下流方向へ向かうと、古くから湯治場として知られるシュクオルの村。

ウンターエンガディンを奥へ奥へと延びているレーティッシュ鉄道の路線もここシュクオル・タラスプ駅(Staziun Scuol-Tarasp)で終点です。駅から村の中心部までは徒歩(所要15分)かポストバス(所要5分)。

駅のすぐ近くにはモッタ・ナルンス(Motta Naluns 標高2,146m)へ登るロープウェー乗り場があり、となり村のフタン(Ftan)なども含めての一帯で夏はハイキング、冬はスキー/スノーボードが楽しめるエリアになっています。村の中心部のメインストリート・ストラダン通り(Stradun)を挟んで奥まった細い道沿いには、グアルダと同じくスグラフィートの装飾が美しい家々が立ち並んでいます。

また、道沿いや広場に水飲み場が多くあり、これはいわゆる「飲む温泉」。温泉施設はストラダン通り沿いにあるエンガディン温泉センター(Bogn Engiadina Scuol)で、プログラムに沿った健康的入浴法の体験ができます(要水着)。エンガディン温泉センターの営業時間は8:00〜22:00で、温泉・プールなどサービスによって営業時間が異なるので注意。温泉・サウナ利用料金込の入場料は1回券CHF25.00、3日券CHF66.00。

グアルダへの行き方

アクセスはレーティッシュ鉄道利用で、クールからは直通列車で所要1時間58分、サンモリッツからはサメダン乗換で1時間24分。チューリッヒ方面からの場合はラントクアルト乗換で、所要1時間30分(チューリッヒ中央駅からは2時間43分)。

ミュスタイア
Müstair

ウンターエンガディン地方を旅行するにあたって、もっとも秘境といえる場所がここミュスタイア。

あともう2キロも東へ進めばイタリアで、鉄道駅も無いのでアクセスはポストバスか車のみ。公用語もロマンシュ語(住民の殆どがドイツ語とのバイリンガル)で、スイスの他の村と比べてもなにか違う印象を受けるはず。

普段は人口や約750人の小さな村ながら訪れる旅行者は多く、その理由は1983年にユネスコ世界遺産に登録された聖ヨハン修道院(Claustra Son Jon/Benediktinerinnenkloster St. Johann)があるから。780年にカール大帝の命によってクールの司教が興した修道院で、1167年から現在に至るまで女子修道院として機能しています。20世紀なって行われた内部の修復作業中に、1160年代に描かれたフレスコ画が多数見つかり、建設当初に描かれたものと併せて見ることができます。また、修道院博物館(Klostermuseum)ではそのフレスコ画を始め、修復中に出土した遺跡などが展示されています。修道院博物館の営業時間は5月〜10月は9:00〜17:00、11月〜4月は10:00〜16:30となり、いずれも12:00〜13:30は昼休み。日曜・祝日は午後のみの営業となります。入場料はCHF12.00。

ミュスタイアへの行き方

アクセスはレーティッシュ鉄道ツェルネッツ駅(Zernez)からのポストバス利用が一般的。ツェルネッツまではクールからの場合シュクオル方面行き列車でフェライナトンネル出口にあるサグリンス(Sagliains)まで行き、そこからサメダン・ポントレジーナ行き列車を利用します。サンモリッツからはサメダン乗換でシュクオル行き列車を利用。ツェルネッツ駅前のポストバス停留所「ツェルネッツ・ポスタ Zernez Posta」からミュスタイア(Müstair-cunfin)行きかマルス駅(Mals Bahnhof/Stazione Malles)利用のどちらでもOKで、7:15〜22:15の間で1時間に1本の運行。

ちなみにマルス(イタリア語ではマレス)はミュスタイアを越えてイタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州にある街。マルス駅からはヴァル・ヴェノスタ鉄道が運行していて、メラーノ(Merano)経由でボルツァーノまで接続しています。

スイス国立公園
Schweizerischer Nationalpark

国全体が国立公園並に美しい国土を持つスイスですが、意外なことに「国立公園」と指定されているエリアはウンターエンガディンにある一帯だけ。

そもそもスイスでは特に山岳地帯などの美しい景観や豊かな自然があるエリアでは鉄道や集落の開発が早く進んだために、自然や野生動物の保護を目的とした法整備が20世紀初頭まで行われていませんでした。ユングフラウ地方やヴァレー/ヴァリス州などが国立公園指定をされていないのはその為で、1914年に徹底した自然保護を目的として手付かずだったこのエリアが指定されました。

標高1,400m〜3,174m・174.2平方kmの広大なエリアの中に車が通れる道はわずか1本で、農業・林業などは一切禁止の「ありのままの自然」の中に野生のシュタインボック、マーモット、シカなど多数の野生動物が生息し、原生のエーデルワイスなどを見ることができます。

ハイキングコースは全21コースあり、指定区域外への立ち入りは禁止されています。公園内の要所まではツェルネッツからミュスタイア方面へ向かうポストバスが利用できますが、それ以外の公共交通機関は無く、携帯電話の電波も途切れるエリアがあり、さらに宿泊施設が広大な園内に1ヶ所のみ(シャマンナ・クルオッツァ Chamanna Cluozza)なので入園前に綿密なプランニングが必要です。ツェルネッツの村に歴史や生息する動物や植物の解説などが見られるビジターセンターがあるので、そのエリアに行く際は是非。